モノづくり企画~アイデア創出方法(まとめ)
新しいモノづくりの企画からアイデア創出までの手順をまとめました。
1.新たなモノについての社会的状況調査
新たなモノづくりをする前にニーズ調査を行います。背景にある問題を調べ、何に役立つのかを理解することで取り組む意味を理解します。モチベーション向上のためにも必要です。
2.取り組むモノの作りの難しさその原因を調べる
着手するモノについて現在の状況や過去の経緯を調べ問題点や改善点を把握します。
新しく取り組むモノが世の中にないのであればナゼなのか?原理的に可能なのか?を考えます。また、既に世の中にあるものであれば、過去の事例で現在何が問題なのかを技術的に調べます。調査方法を紹介します。
3.取り組むモノの問題点を理屈で考える
調べた問題点を分類分けし、ナゼ、ナゼを繰り返しながら根本的な要因を理論的に考えます。アイデア検討する上で最も重要な作業です。問題の根っこを理論的に理解することで、現状取られている様々な対策(形状、方法など)に捕らわれることなく、根本的な問題を解決することができます。考え方を紹介します。
4.問題を追及した結果をまとめる
問題点を理屈まで遡って考えた道筋を分かりやすくまとめ、説明資料として利用できるようにします。まとめ方を紹介します。
5.問題を対策する理論的な方法を考える
問題を起こしている理論的な要因を対策する方法を技術的に考えます。理論的な問題に関しては、すでに世の中に考えられている様々な対策があるので調べます。ここで強調したいのは作りたいモノに関する対策ではなく、理論的な問題に対する対策を調査検討することです。問題を理論的に考え、抜本的な対策を考えることで新しいアイデアが生まれるのです。
6.問題を対策する方法を絞り込む
理論的な対策をするための技術的な方策を考えます。たいくつかの案を組合わせたり応用して新しいモノへの適応を考えます。考え方を説明します。
大学や研究所に相談してうまくすすめるために
あらたな事をするとき、基本的なことを教えてもらいたくなることがあります。
文献などで紹介されていることも現象としてどうなるのか分からない時などです。
そんな時は研究所や大学に教えてもらいに行くこともあるでしょう。
相談の方法などについてこれまでの経験をお話しようと思います。
はじめに大学や研究所の研究者が産学連携についてどのように考えているかおさえておきましょう。相談する時に頭の片隅においておくと良いと思います
研究者のニーズとしては下記があります
〇自らの研究の意義や今後の方向性が考えられる
(実社会での用途や使用環境などの生の情報が得られる)
〇新しい研究テーマであり、今後発展しながら継続できる
(継続して論文発表できる)
〇研究費が潤沢
〇研究結果が社会に役立った実績ができる
反対に拒否反応を示される例として
・大学や研究所のネームバリューを利用することだけ考えている
(自社のHPやカタログに掲載して「お墨付き」のようにする)
【相談先を探す】
相談したい内容の研究者を探します
・検索エンジン
KAKEN — 研究課題をさがす
researchmap
・学会の論文
【コンタクトする方法】
タイミングがあえば目星をつけた研究者の学会発表を聴講して名刺交換するのが早道です。研究者のHPがあればメールしたり、なければ大学や研究所の産学連携窓口にメールしてみます。
個人的には最初のコンタクトで門前払いされた経験はないので気軽に聞いてみましょう
【相談する内容について】
いくつかのケース別で考えますが、事前に勉強しておくことは必須です
実物をみたいとき、動かし方を聞きたいとき
実際に動作しているところを見たいと相談します。実験装置の見学は他の企業と共同で行っているもの以外であれば見せてもらえるはずです
理論的な考え方が合っているか聞きたいとき
こんな用途に使えますか?という抽象的な質問では話は進展しません。「Yes」か「No」で終わった話は先生方からよく聞きます。理想なのは自分なりに勉強して概算結果などを交えて具体的な例で質問するのがおすすめです。
継続的にアドバイスしてもらいたいとき
これも具体的になにをアドバイスして欲しいかを説明します。例えば下記ですが、事前に何も勉強していないと厳しいです
・理論計算のための式や物性値のアドバイス
・試験装置をつくるためのアドバイス
・試験方法についてのアドバイス
・現状の課題についてのアドバイス
一緒に開発して欲しいとき
同様に具体的な内容を説明します。この場合は冒頭でお話しした大学や研究所のニーズにあっているかが重要と思います。ただし他の企業とすでに契約している場合は難しいかもしれません。
【契約について】
各種の形態がありますので先方と相談してきめます。下にいくほど関係が深まります
契約前に自社の知財担当と考え方を相談しておく必要があります。「不実施補償」についてもめることが多いです。
・秘密保持
秘密を関係者外に漏らさないなどの規定
・学術指導
学術的にアドバイスしてもらう
・共同研究
共通のテーマについて役割分担して研究する
【費用について】
先方によって支払う費用は様々です。
年間で数十万円~数千万円まで様々なケースを聞きます。
先方のニーズに合致していて取り組みたいテーマなら低コストでできるかもしれません。
あくまでも私の経験ですが、共同研究で学生に研究してもらう場合は年間最低百万は必要でした。最高で数千万と言われたこともあります。
一方で共同研究でもアドバイスを主にした場合、先生一人で年間50万円程度でした。
【副産物】
一緒に進めることで知識と経験が得られて効率的に開発が進むこと以外に下記のメリットもあります
・大学や研究所が論文発表時に共著にしてもらえることがある
社名と名前が記載されます
・学会や講演会に参加しやすくなる
社内での出張理由を容易に説明できます
・国のプロジェクトに応募しやすくなる
国との関連が強いので新たなプロジェクトの情報が入りやすく、先生がバックにいてもらえると採択に通りやすい
・先生の知合いの他企業の研究者を紹介され情報を得られることもある
第45回 改良検討(アンモニア燃焼例)
評価の結果から課題と対策を考えます。目標に対して評価結果が異なる原因を初期設計時に立ち戻って考えます。
目標の動作条件で火炎が吹き消える
混合気の速度と燃焼速度を釣り合うように通路の面積Scを決めましたが、設計した条件で吹き消えるなら、設計どおりに流速がさがっていないため変更することを考えます。吹き消えた条件での流速をデータから計算し設計値との差から修正量を考えます。
目標の動作条件でアンモニアが排気ガスに排出される
排気ガスにアンモニアが排出されるのを防ぐため装置容積Vcを決めました。アンモニアが排出されるなら安定して燃焼していなかったり体積不足が考えられます。
炎がとどまると想定している部分(保炎部分)の様子を観察窓で調べるなどしてみます。安定燃焼しているのなら体積が不十分と考えます。排出する条件での滞留時間をデータから計算し、設計値との差から修正量を考えます。
排熱回収熱量、熱媒放熱量が目標に達していない
初期の設計に用いた伝熱能力(熱通過率)が不適切で壁面積(伝熱面積)Sが不足していたり、ガスの流れがかたよって全体に流れていないなどが考えられます。計測データから熱通過率を計算し、結果を用いて必要な伝熱面積を求めます
以上のように評価結果を設計に反映させて装置の改良を進めます。これを繰り返し行って完成度を高めていきます。
第44回 評価項目の検討と結果整理(アンモニア燃焼例)
評価する項目
うまく燃やす条件をみつけることを第一の目的とします。アンモニアの燃焼は、ささいなことで消えてしまったり、排気ガスは窒素と水蒸気だけにしたいのですが、燃料のアンモニアが排気されたりNOxが発生することが課題です。
課題を考えたとき炎が吹き消えやすいことへの原因と対策案を考えました。
また、炎はガソリンなど炭素が燃料に含まれると黄色になるため、加熱する効率がよくなります(ふく射熱伝達)が、アンモニアには炭素が含まれないため効率が高くありません。
そこで排熱を回収して空気を加熱することで火炎の温度を高めたり、火炎部分にふく射体を入れて効率を上げるなどの対策案を盛り込んで上図のように構造を考えました。これら対策案の効果を確認することを第2の目的とします。
燃料流量をH,M,Lの3段階、空気比を同様に3段階、熱媒流量も同様にして評価項目を考えると表のような27通りの組み合わせになります。空気比は第43回で説明した計算値です。
各ケースについて排ガス成分、燃焼効率、排ガス交換熱量、混合器予熱量、熱媒放熱量計測値や計算した結果で効果を検討します。
評価結果のまとめ
うまく燃やす条件を見つけるために上図のような燃焼量と空気比のグラフに安定燃焼領域がかけるように整理します。
吹き消え限界は燃焼器温度の急降下や失火検知した動作条件、未燃限界は排ガス成分にアンモニアが排出される条件、および予混合器への逆火が生じる領域もプロットします
(逆火防止のフレームトラップやラプチャディスクは必要かもしれません)
これらに囲まれた領域がうまく燃やせる安定燃焼領域となります。
さらに上図のようにNOXの排出濃度の等値線を結びNOx規制値以下にできる条件を探しておきます。さらに燃焼効率の等値線を記入します。
各部の熱量は上図のように整理します。熱交換部の設計で計算した回収熱量が得られているかを確認します。
第43 計測評価の具体例(アンモニア燃焼)
第1回から考えてきた下図のようなアンモニア燃焼器を評価をする場合について具体的に考えてみます。
計測はセンサを選定して下図のように配置していましたアンモニアの燃焼についての状態量(計測値)や評価量(計算値)は下記のように計測値を用いて計算します。マゼンダの矢印は計測値を用いた計算を示しています。
ここでは燃料流量から完全燃焼するのに必要な理論空気量、実際に供給する空気量と理論空気量の比である空気比を空気流量計測値から計算します。この後の熱量の計算に必要な燃焼ガス流量もこれらの値から計算できます。
燃焼熱量は燃料流量から、排ガス熱交換器での排ガスと空気の熱交換量はそれぞれの計測値から計算した比熱を使い温度と流量から求めます。燃焼熱を利用するための熱交換器での熱量は熱媒の計測値から計算します。
評価は安定した燃焼をおこなうため、燃料流量にたいして目標の空気比になるように空気流量を調整します。また熱負荷吸収装置で放熱する量は熱媒の流量で調整します。
これらの調整で影響される燃焼状態を燃焼器内の温度や排気ガス中のアンモニアや窒素酸化物の量で監視します。
上図のように画面上に監視する値を表示してチェックしながら調整します。
なお失火した場合の検知のために燃焼室にはUVセンサ、フレームロッドなどを通常は設置して自動的に燃料停止するようにします。
第42回 評価結果を整理する
評価結果は目標値(初期理論計算した値)と比較してよしあしを検討します。実際の評価では理論計算どおりにはならず差がでるはずです。この差をどれだけつめられるかが設計技術となります。
どの程度の差が一般的なのかは使用条件と性能が公開されている同様の装置の使用条件で理論計算した結果と性能とを比較して調べています。
評価データを整理する
〇変化させた動作条件で評価値を整理する
・時系列データから平衡状態のデータを抜き出す或いは時間平均値を計算します(下図)
・整理したデータは動作条件を横軸に評価量を縦軸にしてグラフ化してみます
・他の条件をパラメータにしてグラフにしてもよいです(下図)
〇明らかに傾向が異なるポイントがないか
動作条件で評価値を線でむすびあきらかに傾向がことなる点があれば再評価します
〇設計時に計算した理論値と比較する(下図)
理論計算値と実験値の傾向がことなる場合は実験方法や条件が異なっている可能性がありますので確認が必要です。
第41回 実証評価をおこなう
評価を開始します。
〇装置設置
安全確保が必要なら装置の場所と
モニタする場所は窓や壁で隔てます
〇モニタ
補機操作部とモニタを近くに設置し(下図)
操作しながらデータをチェックできるようにします
〇運転操作
データモニタをみながら補機を操作して目標の動作条件に調整します
〇定常観察
動作条件をあわせたらデータ時間変化モニタをみて圧力、温度などの状態量が平衡になるまでまちます
〇データ保存
データは評価開始から停止まで保存します
データはファイルに随時、追記します
トラブルがおきても途中までのデータを確保するためです