モノ作り企画~実証までの道のり

モノ作りを進めるステップを解説します

大学や研究所と共同して開発を加速する

大学や研究所と共同するなら、お互いにメリットある進め方をすれば開発は大幅に加速されます。企業の立場としては新しい装置の設計、評価、課題抽出、改良を大学、研究所の知識と経験を得て効率的に行いたい。大学、研究所は企業の問題提起に対し、対策の検討が新しい研究に繋がり発表や実績に繋がると嬉しいはずです。これまで大学・研究所と一緒に開発してきた進め方の例を説明します。(事前に共同で実施する契約は結ばれていることとします)
【分担する内容を決める】
企業:新たな装置の開発(設計、試作、評価、改良)を行います
大学・研究所:基礎実験、シミュレーションなど装置設計や装置の課題の対策に反映できることをお願いします【計画を作成する】
自分たちの装置の開発計画と、大学・研究所にお願いする事項をどのタイミングで反映するか計画を作成し同意を得ます。スケジュール感は企業とは異なりますので、装置開発の期限に合わせてもらえるように進められるかが大切です。そのため、毎回の打合せのはじめに計画と現在の状況を話し合うようにします。【進め方】
定期的にお互いの進捗を報告しながら進めます。1回/月が良いと思います。大変ですが企業側もアウトプットを毎回しっかり出して説明します。アウトプット出す過程で抽出された課題の原因や対策を一緒に考えてもらうためです。【打合せ場所】
大学や研究所で行えば先生方や研究してくれる学生達も参加してもらえますし、実験状況も見せてもらえます。【報告会内容】
企業
コンセプト、設計、試作、評価結果、考察などのアウトプットを説明します。取組み方や考え方、課題について意見がもらえるようにし、開発を進める上で質問事項があれば聞くようにします。意見は次回までに反映させて結果を報告します。
大学・研究所
実験やシミュレーションの進捗を説明してもらいます。【開発を加速するために】
企業と大学・研究所が一丸となって開発をすれば加速され大きな成果が見込めます。そのためにはお互いの役割分担部分をリンクさせる必要があると思っています。
業は大学・研究所の検討結果を装置開発へ反映することを常に意識し、応用方法を考えて進めます。反映できそうなら計画にとらわれず、すぐに試してみます。実施結果から得られた課題は企業と大学・研究所の共通のものとなるからです。お互いに相談して対策案を考え試せます。この繰り返しがうまくいけば知識と経験が開発に直結し加速して進めることができると思っています。【人材育成】
多くの人は企業に入って仕事を始めると、知識の大切さを実感します。大学と共同するのですから知識を学び人材育成に結び付けるようにしたいと思っています。若手技術者に積極的に参加してもらって、読むべき文献や論文、シミュレーションの方法を教えてもらうようにします。図書館も使わせてもらえるように交渉してもよいと思います。
希望する若手社員を研究室に社会人ドクターとして受入れてもらったこともあります。相談次第では学位を得ることも可能だと思います。【アウトプット】
報告書
企業は毎月の報告会の資料をまとめれば立派なアウトプットになります。大学・研究所には契約で取り決めた報告書を提出してもらいます。
学会発表
研究内容に関連する学会で毎年発表することを目指します。先生方にも連名してもらうようにすれば両者のアウトプットになります。
特許
特許の共同出願はハードルが高いです。契約時に取り決めていなければ自社の知的財産を担当する部署と事前に相談して進めるのが良いと思います。


 

装置を評価して課題を考え対策する手順


装置を評価し結果を理論計算と比較して課題を考えます。必要であれば追評価します。課題に影響する状態量(温度、圧力など)が設計時の想定外なのか想定内なのかなど調べて原因を絞り込んで対策を考えます。

【装置を評価する】
まず何を評価するのかを考え計画を立てます。最終目的は設計の動作条件で目標性能が出るか確認することです。ただし想定通りに性能が出るとは限りません。そこで動作条件に幅を持たせ、少し広い範囲の条件で性能を確認し装置の特性を調べます。このため評価する条件は数パターンになることもあります。計画は検討した評価条件のパターンの実施日程を考えて作ります。評価パターンによって難易度が異なれば、難易度の低い条件から実施するようにします。
装置の規模によって1パターンの実施に必要な日数は異なると思いますが、可能ならば1パターン1週間以内にすませ、休日を挟まないように計画したいと思います。
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【実証評価する】
新しい装置の性能を調べる時には、人間が温度や圧力、流量などの状態量や、動力、熱量などの評価量をモニタしながら補機を操作します。なので補機の操作盤はモニタ近くに設置するのが良いでしょう。
目標の動作条件に調整できたら物理量や評価量の時間変化が落ち着き安定状態になるまで継続します。これで1パターンの条件評価を終了します。

なお、データは評価開始から停止までファイルに追記していくようにプログラムしておきます。トラブルが生じた時もそれまでのデータは保存されているので安心できます。

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【評価結果を整理する】
各部状態量が時間的に十分安定化した範囲のデータを時間平均などして各条件パターンの結果をまとめます。データをグラフ化して異常なポイントがあれば再評価することも考えます。
結果の良し悪しは理論計算値と比較して判断します。理論と実際の結果には必ず差がでます。理論との差が大・傾向が異なるなどの評価量について、影響する状態量をデータから抽出します。設計で考えていた状態量に対して想定外であれば動作のさせ方(条件)が、一方、想定内であった場合は設計ミスが考えられます。

さらに課題を追究するため、次の評価では、その状態量に影響する条件変えて結果を調べるなどして原因を調べるていくことになります。最終的に原因が絞り込めたら装置や補機の改良につなげていきます。tech-consul.hatenablog.com【評価の具体例】
具体的なデータのモニタ方法、評価量の計算方法、さらに装置の動作方法についての実施例です。

tech-consul.hatenablog.com

【評価結果の検討例】
評価条件のパターンに対する結果の整理方法やまとめ方の具体例です

tech-consul.hatenablog.com【評価結果からの改良検討例】
評価の結果から課題を抽出し対策を検討する例です。設計時の計算を振り返り、設計時の想定と実際のずれを補正するように形状の再検討をします。

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評価ミスを減らす動作状況モニタを準備する

装置を本格的に評価する前に行うことをまとめました。はじめに補機を動作して目標条件を満たすか確認します。次に設備の安全確認の後、設備を作動して装置の動作確認します。並行して装置内の状態を把握するためのモニタを準備します。評価中に装置状況を把握できれば、計測や条件設定のミスなどに気が付き対応することで評価のやり直しを減らすことができます。【動作チェック】
水やオイルなどの媒体を使用する場合は配管などに投入し、補機を1つずつ動作させ、最終的に装置の動作条件が補機を動かして作れるか確認します。
tech-consul.hatenablog.comtech-consul.hatenablog.com【装置内状態をモニタする】
複数設置したセンサの値をデータ収集装置で取込む準備をしました。装置の状態を把握しやすくするため、装置、補機、配管やセンサ構成を簡易的なイメージ図にし、PCの画面上にスキャン毎のデータを表示します(下図のxx,yy,zz)。またセンサデータから計算した値の時間変化も表示できるようにします。tech-consul.hatenablog.com

【モニタの作成】
計測はコストと保守性を考えPCでOSはLinuxを使用するものとして、モニタはXwindowを利用して作成します。時間軸やデータ値の軸を画面のピクセル座標に変換して画面上に表示する方法を説明しています。tech-consul.hatenablog.com

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【計測値をモニタに表示する】
PCからデータ収集装置をコントロールしてセンサのデータを収集しモニタ表示します。イメージ図へはスキャン毎のデータを表示するようにします。時間変化のグラフは、PCのメモリ上に保持した1スキャン前の時間とデータと新たなスキャンでの時間とデータとの座標間で線を引き、これを繰り返していきます。tech-consul.hatenablog.com

 

装置の設置から計測準備までをスムーズに行う


設計して試作したモノが実験室に納入された後に行う手順です。本体ではない部分の組付けに関することですが、基本的に丸投げせず自分で確認します。これらの手順のミスで動作や評価がうまくいかないことが多いのです。今後生じるかもしれないトラブルに迅速に対処するためにも内容の把握は必須です。【モノを確認する】
製作メーカさんで立合って満たすべき機能を確認しているハズですが、組立て準備を進めてはじめて不具合が見つかることがあります。そこで、本格的に組立、配管、配線などする前に取り合いなど確認します。問題があったら製作メーカさんに相談して直してもらいます。もちろん自分のミスであった場合は有償でお願いします。tech-consul.hatenablog.com

【モレチェックの実際】
内部に流体を投入する容器や配管など漏れては困るモノについてはモレの確認をしっかり行います。確認はコンプレッサの空気で行うことが多いです。装置の耐圧に注意して空気圧をかけて調べます。空気の圧力が下がらなければモレ無しです。モレがある場合は水槽に浸けるなどしてモレている場所を特定します。tech-consul.hatenablog.com【設置する】
配管や配線のレイアウトをイメージしながら装置を作業台や架台に設置します。20kg以上になるような重量物はリフターやホイストなどを使用します。設置が自分ではできなくても設置時には立合い、指示ができるようにしておきます。tech-consul.hatenablog.com【インフラとの接続】
装置にインフラを接続するための配管の選定や作業は、設計者でやる人は少ないと思いますが、知識を持つことは大切です。接続時に必要な部品が不足して作業延期などよくありますが自分でチェックして対策しておけば滞りなく事が進みますし、装置の動作や評価時に接続部でトラブルが発生しても対応できます。動作条件に適する配管や接続方法を選択することは安全上も大切です。業者に作業をお願いする時にも知識がないと話になりません。tech-consul.hatenablog.comtech-consul.hatenablog.com

【補機の設置】
補機(ポンプ、バルブなど)やセンサーを取付け接続方法も知識として身に着けておくと良いです。接続部は組合せがありますから事前にチェックして部品不足で設置遅れが生じることなく進められます。tech-consul.hatenablog.com

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【データ計測の準備】
設置準備が整ったら、装置の動作状態を調べるためセンサの計測確認を行います。複数のセンサを取付けている場合、全てのセンサの信号を同じタイミングで収集できれば時々刻々の装置全体の動作状況が把握できます。収集はデータロガーで行い、後でデータから随時、評価量を計算するためPCに取込んでいます。tech-consul.hatenablog.com
【データ計測の実際】
 できるだけ安価に計測することを目指し、OSや言語が無料で入手できるLINUX環境で計測を試みています。データロガーとPCをネットワークで繋ぎ、通信プログラムを作成してPCからロガーを操作&データ収集する方法です。評価時にはセンサの計測値(物理量)から性能を調べる評価量(出力、効率など)を計算します。市販の計測ソフトでは複雑な計算が困難だったり、製作したソフトでは修正に時間が掛かったりしますので自作にメリットもあります。

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評価するコンディションを整える


モノができたら動かして目標とする機能を確認するのですが、条件の整った場所が無ければ効率的に進められません。少し時間をかけてもしっかりとコンディションを整える必要があります。その後、状態を調べるために必要な量(温度、圧力など)を考え、計測するためのセンサ選び、センサからのデータを収集する装置を選定します

【評価する場所を探す】
確認評価をする場所を一から探す手順です。評価に必要なネットワーク、照明、水、電気などのインフラ、部屋の広さ、空調、床材、部屋へのアクセスなどをチェックして決めます。

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【評価設備を準備する】
場所が決まったら評価する条件を整えるために必要な設備を考えます。場所を管理する担当者に周囲の環境を教えてもらい使える設備は利用します。設備を導入する場合も相談して許可を得て進めます。

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【装置状態の計測】
装置の動作状態を調べるために必要な状態量(温度、圧力、移動量、流量など)を考えます。装置構成を簡易図で表して計測したい状態量を記入するとモレなく検討できます。さらに状態量を計測できるセンサを探します。データを記録するためにも出力付のタイプを選ぶのが良いです。

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【センサからのデータを収集する】
動作中の装置の状態の時間変化を調べるために、複数のセンサからのデータを時々刻々と収集します。そのためにはデータ収集装置(DAQ)が必要となります。いくつかの種類があり選定が必要です。高額の装置ですが古いタイプであればレンタル販売や中古など安く購入できるので検討してみるのも良いと思います。

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【装置を動作させる補機を準備する】
装置を動かすための補助機器(モーター、ポンプなど)の選定をします。簡易図に記入して選定漏れのないようにします。補機も装置の設計仕様に合わせて選ぶ必要があります。同じ機能の補機にも様々な種類があるため仕様に沿ったタイプを調べます。

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イメージ図から素早くモノづくりする


イメージ検討したモノを効率的に早く製作する手順を説明します。加工は社内外にお願いし、加工手順や加工性を考慮して加工先で図面化してもらうのが効率的です。

製作メーカさんを探す
加工ノウハウが無く、加工もできない場合、協力頂けるメーカと相談しながら作り上げます。まずは製作してもらえるメーカを探し、やりたいことを相談します

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加工できる形状を相談して最終形を決める
設計の理想があっても加工できなければ仕方ないという考えが大切です。加工メーカさんに同士になってもいましょう。初期形状の加工性をプロと相談して形状修正し一緒にモノを作り上げるのです。エゴを捨てる覚悟が必要です。
手順としては、まずイメージ図で作りたいモノの説明をします。重要なことは、何がしたいか、どんな構造なのかを理解してもらうことです。分かってもらえれば一緒にどうしたら良いか考えてもらえることができます。


次に最低限守りたい寸法は押さえつつ、材料や加工方法を相談して決めます。加工方法を一緒に検討して進めると時間が掛かる図面化もお願いできることが多いです。そうして効率化することを考えます。tech-consul.hatenablog.com

図面完成し完成品のチェック項目を決める
作成してもらった図面はメールなどでやりとりして確認し修正あればお願いして完成してもらいます。最後に製作物の寸法や満たすべき機能など受取の条件を決めます。部品などの場合は組付けるパーツを支給しておいて組付性を確認してもらうなどします。
「この部分に不具合があったら初期不良なので修正して欲しい」など言いにくいこともありますが、経験上、お互いにしっかりと取り決めておくことが後々トラブルにならない最善策です。

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製作物を発注する

製作に必要な時間を聞きながら、希望する完成日や支払い条件の相談をします。支払いなど事務的な打合せを完了したら発注書を送るなどして正式に発注します。tech-consul.hatenablog.com

製作物を確認する
メーカさんに出向いて完成品を確認します。梱包、搬送、搬入などする前に現場で確認すれば時間短縮になりますし、問題点を直接話し合うことができるので間違いがありません、勘違いによる工数増加を防ぎます。出向いて確認することはメーカさんにとってもイベントになりますのでスケジュールを決めたら余程のことが無い限り日時の変更はしないようにします。

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創りたいモノをアイデアからカタチにする


創りたいモノをアイデアからカタチにする手順を説明します。過去の技術の蓄積や経験のないモノの場合は手探りでゼロからのスタートですが、理屈をしっかり押さえて設計を進めます。
次のような手順で進めます1.目標能力に必要なエネルギー量などを計算する。 2.安全に安定して効率よく変換するための仕様を計算する 。3.仕様を満たすように各部の寸法を求める。4.最終的に頭の中の装置イメージをアウトプットする。


目標を満足するための必要諸元を計算
装置の目標とする能力を達成するために必要なエネルギーなどの物理量を計算し必要諸元とします。例えば六畳を温めるための能力の灯油ファンヒータを考える場合に必要な灯油を流す量、ファンで空気を流す量などを計算します。
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必要諸元から要求仕様を計算する
諸元を満足し、安全に安定して効率よく変換するための仕様(温度、圧力、速度など)を計算します。ファンヒータを例にすれば装置の中で決まった位置に炎が安定するために必要な流速や、風が臭くならないために必要な体積、風の吸込み吹出口の流速などです。例の場合は物理化学的な理論計算を行います。

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要求仕様を満たす形式、形状を決める
設計する装置についての標準的な形式を調査します。形式に沿った構造で要求仕様を満たす寸法を考えます。ファンヒータで燃える部分を上の写真のような形式にする場合、燃料の吹出し孔の個数や径を要求仕様に合った面積にします。このように要求仕様を形状寸法に反映していきます。

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考えをイメージ化する
これまで考えた形状を手書きでも良いのでイメージにします。説明する相手に何が作りたいのかどんな構造なのか理解してもらうのが目的です。ですので頭の中にある構造を第三者に分かりやすいように工夫して図を作成します。製作に向けて上司への説明、加工メーカとの作りの相談をする時に使います。

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考えた形状で確認したい部分の対応を考える
形状案について力、流れ、温度、圧力などの分布がどうなるか不安になる時があります。事前に2次元や3次元のシミュレーションで確認できれば良いですが、困難な場合は動作させた時の状態をセンサを取付けて見られるようにしたり、複数のパーツを交換して比較評価して決めることを考えます。

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