モノ作り企画~実証までの道のり

モノ作りを進めるステップを解説します

第17回 納品検査に立合う 

 

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出典:pixabay


メーカで受取確認をする場合、期日に近くになったら出向く日程を確定します。日程を決めたら自分の都合で簡単にスケジュールを変更することがないようにします。先方は期日に合わせるように無理して準備してくれていることもあるからです

 事前
 立合い時に確認すべき詳細項目を考えておきます。メーカにて実施してもらえる内容にとどめ、本格的には自社で行うことを念頭にします。現場で分解などをお願いする場合はメーカに連絡しておきます
 内容
 ・確認条件
 ・特にチェックする箇所
 ・チェック方法(必要であれば組立てある装置の一部を分解するなど)

当日

〇全体の内容を打合せ
 ・実施内容について簡単に説明する

 〇現場で確認
 目的:受取条件を満たした装置を当日受け取ること
 アウトプット:実施状況の写真(撮影許可必要)、データ〈取得していたら)
 ・確認事項を実施してもらいます
 ・条件を聞き、様子(センサがあれば値)を見ます

〇心配な箇所を見つけたら
  ダメと言って終了するのでなく、修正方法をメーカと相談し実施してもらいます
  内容
  ・自分の意図が伝わっているか確認し、必要なら説明し直します
  ・不具合と思った現象がなぜ生じているか相談します
  ・原因不明なら別の視点で確認する方法をその場で考え相談し実施します
  ・原因が分かったら修理を考えてもらい当日対応可能なら待ちます
  ・当日対応困難なら次の確認日程を相談して決めます
  アウトプット:不具合部分の写真(撮影許可必要)

 〇機能が確認できたら
  そのまま引取って帰るか、日時を指定して発送してもらいます

〇依頼者に確認状況を連絡します
        速報を電話します(またはメール)。心配していると思いますので一刻も早く生の声を聴かせると良いと思います。撮影した写真があればで送ると喜ばれると思います。

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次回からは、装置の動作確認準備を行います

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出典:pixabay

技術創出できるエンジニアに必要なスキルを今から磨きたい

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RAEng_PublicationsによるPixabayからの画像

モノ作りに関わるエンジニアは、SDGsやカーボンニュートラルなど今後新たな製品に携わることも多くなるでしょう。新しい技術にも柔軟に対応できるようなスキルとは何か、どうしたら磨くことができるかを考えてみました。

社内外のエンジニア、大学や研究所の研究者と共同で仕事をさせて頂いた経験からスキルが高いと皆が感じている人の特徴は

〇教科書にある理論や論文など基礎~新しい研究に関する知識がある

〇専門に関わる周辺知識がある

〇理論通りにならない現実の箇所と理由を経験的に把握している

〇現実の問題を理論的、経験的に分析し対策を考えることができる

 以上のように技術の裾野が広く、特に重要なのは知識だけ、経験だけでなく両方の見地から考えられることです。

 新たな技術を確立するためには、理想(知識)通りにならない問題(現実)を解決して前に進まなければなりません。問題を理論と経験から分析し対策するスキルが重要となります。先の方々はこのスキルが非常に高いのです。 

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 Gerd AltmannによるPixabayからの画像

 彼らのようなエンジニアに一歩でも近づくのはどうしたらよいのか。現在の仕事をしながらスキルアップできないかを考えてみました。

 モノに関する(設計~販売、理論と実際)深い知識を持つように心掛ける

 〇携わっているモノの成り立ちを調べる
  内容:自分の業務の前、後行程の業務から始め
     企画段階や最終チェック方法までの一連の流れを納得できるまで調べ学びます

  方法:・自分の前後工程の担当を調べます(上司、同僚などから教えてもらう)
     ・メールで予約しオンラインか対面で話を聞きます。
     ・現場を見せてもらい、さらに深い知識を得ます

 〇携わっているモノに関する意識を高める
  基礎知識(理論)を学び、実際のモノと理論を結び付けて考えます。また、理論と実際の差を調べます
  内容:機能している基礎理論を調べ学び直してみます
  方法:教科書や専門書で学んだ後、知合いや設計者にヒアリングする

  内容:構成や部品に関して調べ何故そうなっているかを考え調べます
  方法:概略構造図などを見て、不明部分を知合いや設計者にヒアリングする

  内容:実際と理論の違いがどこなのか、何故なのか調べてみます
  方法:製品評価を行う部署でヒアリングする

このように知識や経験(会社のノウハウ)を習得することで、自分の担当しているモノにおいて問題が発生したらどうしたら良いのか、理論的、経験的に考えることができるようになると思っています。活動を担当外のモノについても広げ、技術の取り組み方や意識を磨きさらなるスキルアップができたら良いなと思います。

  

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Gerd AltmannによるPixabayからの画像

 

第16回 発注する

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受取条件まで相談したら見積書の作成をお願いします。支払い方法を確認し正式に発注します。工場見学がまだであればどこかのタイミングで見せて頂けないかお願いします。 

〇納期の相談をする
 納期の相談をします。短くて2週間、通常は1~2か月はかかると思います(私の経験です)高度な装置ではもっと時間が必要かもしれません。大体の必要日数は考慮して納期の相談をします。
(通常は期初などに依頼者とスケジュールの話し合いをして、製作完了し納入する時期は決めておきます。ですのでスケジュールを守るためには、希望時期から例えば製作相談1ヶ月、製作2ヶ月など遡って相談を開始していなければなりません。)

〇見積書を作成してもらう
 概算の費用は聞いていますが、詳細に打合せして変更や追加部品をお願いしているので見積額は変わっていると思います。無理言って短い納期で製作対応してもらう場合や繁忙期は通常より割高になることが多いです。

〇支払い条件など確認する
 ・月末締めで翌月払いなど支払いのタイミング
 ・先方の口座に一括で支払うなど支払い方法
 初めてお願いする場合、メーカによっては全額先払いや、半額先払い残り納入後などのケースがありますので確認が必要です。

〇発注する
 発注書をメールや郵送で発送します。これで正式に試作開始です。

〇必要なら契約を結ぶ
 製作時にやりとりする情報をお互いに守りたい場合は秘密保持契約を結びます。

〇工場や設備を見せてもらう
 見学して話を聞くことで実際のモノがどのように作られているか触れることができます。今後のモノ作りのためのスキルアップにつながるはずです。

 ・注意事項
   カメラ撮影はもちろん、メモを取るのも嫌がられるかもしれません
 ・加工サンプルがあれば見せてもらう
   サンプルがどのように加工されているか教えて貰えます
 ・工場を見せてもらう
   設置してある加工機とその加工例、加工できる寸法など教えて貰えます

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 後は装置完成時(機能確認する日)まで待ちます。

別の回で説明しますが、完成までの間に装置を受取った後の実験準備などを行います

 

 

 

 

 

第15回 図面完成し最終受取条件を決める

1メーカにお願いした図面案ができたら、修正を繰り返して図面を完成させます。完成した装置に対する最終受け取り条件を決め、確認時に必要な部品(治具)があれば追加してもらいます。機能確認する場合は日程と場所を決め終了です。

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RAEng_PublicationsによるPixabayからの画像

〇図面修正~完成

 方法:メール、電話など

 図面をメールで送ってもらいます。修正して欲しい部分は番号を付けるなど、電話でもどの部分について話をしているかわかるようにします。

 相談内容:
 ・メーカから問い合わせがあれば回答します
 ・修正して欲しい部分があればお願いします
 ・随修正部分が反映されているか確認し最終図を仕上げてもらいます

〇受け取り条件を決めます

 製作物は最終チェックしてメーカから受け取ります。受け取る時に確認する内容について相談します。製作物が部品単体の場合、部品を組合わせた装置の場合などで確認内容は異なると思います

 確認内容の例
 ・製作図通りの寸法である
 ・部品を組付けて装置が問題なく組み立てられる
 ・装置の動作や機能が確認できた

 部品単品の場合は寸法確認になると思いますが、機能確認したい場合は方法を相談します。またメーカが作成した図面CADデータがもらいたい場合も相談します。

 アウトプット:確認内容と日程

 機能確認する場合は、できればメーカに出向くようにして日程を決めます。もし不具合が確認されたらその場で対策の打合せができますし、対応してもらえる可能性もあり、効率的だからです。 

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〇追加製作物の相談

 受取時に機能や動作を確認する場合、確認用の部品が必要であれば製作の相談をします。

 

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第14回  イメージ図を加工できる形状にする

メーカを決めたら詳細相談して図面作成を完了します。 

〇詳細打合せ~図面化

イメージ図を加工できる形状にするために協力してもらう姿勢で進めます。とにかく製作できなければ始まりませんのでイメージ図に拘りすぎず、柔軟に形状変更するつもりでのぞみ、今回で図面作成のお願いまでできるように頑張ります。

アウトプット:加工可能な最終形状図とします。

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RAEng_PublicationsによるPixabayからの画像

 

形状打合せ

製作を前提に具体的な打ち合わせをイメージ図で行います。相談をメーカで行えば加工可能性を現場で確認することや、加工者にも相談できるので効率的だと思います。 

〇装置の用途、動作や機能を説明し(話せる範囲で)やりたいことを理解してもらいます。

〇目標仕様を満足するために計算で決めた寸法や大きさを説明します。
 《開示できるなら計算手法を説明すれば説得力が増すと思います》

〇メーカで普段取り扱っている板材や管材や規格品を使用すれば、納期短縮や低コスト化も見込めますので可能な限り使用します。

〇初期および使用中に不具合が生じた場合に、後で補修ができるような形状にしたいことを伝えます。詳細検討する途中でも必要であれば構造を変更します。
 《不良部分が一か所だとしても後で補修できない場合、最悪全て作り直しになります。脱着可能な点検口を設けたり、修正時に手が入る隙間の確保などで対策します》

〇各部分について詳細に形状を説明し、加工性について問題なく可能、可能だが問題が生じる可能性有、困難など意見を聞きます。

〇問題なく可能な箇所は寸法まで決めます。

〇加工困難な部分は何故困難なのかを教えて貰います。困難な点を対策する方法を考え、思い浮かんだ修正形状について加工可能性を相談しながら形状を絞り込みます。

〇加工可能だが問題が生じる可能性がある場合は、形状変更して問題を回避する手間と、発生する問題の機能への影響度合を考えて判断します。

〇装置を最終的に組み付ける時に、部品同士や工具との干渉などないように形状を最終確認します。

 図面化のお願い

 加工可能な形状が決まったら製作図を書いてもらう相談をします。メーカ担当者の意見を反映した形状ですので前向きに考えてもらえることを期待します。製作図はメーカで書いてもらえるならば2Dでも3Dでも拘らないことにします。図はメールなどで送ってもらい自分で検討するようにします。

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 Frank HullによるPixabayからの画像

 

ここまでで今回の打合せは終了です。あとはメーカからの製作図を待ちます。

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Gerd AltmannによるPixabayからの画像

 

第13回 製作してくれるメーカを探す

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Robert PastrykによるPixabayからの画像

 概略形状の試作を検討します。ここでは社外で試作してもらう場合について考えます。これまでに行った装置の設計を用いることを前提として進めます。製作にあたりメーカには試作に協力して頂くという姿勢で取り組みたいと思います。

〇考え方

装置全体を製作可能で試作(1~数台の製作)から組立に対応できるメーカを主とし、難しければ加工毎(切削、接合など)にメーカを探します。単独で対応可能なメーカが見つかれば工程管理や工程途中での不具合対応などを相談できます。

〇調査対象

 ・該当する装置のメーカ

 ・似た機能を持つ装置のメーカ

 ・接合(溶接、ロウ付など)加工部があれば接合メーカ

 ・加工毎のメーカ

〇調査方法: 知合いから紹介してもらったり、展示会やHPなどで探します。

〇実施手順

 Step1:図を用いないで概略を説明する

    手段:電話、メールなど

 Step2:興味を持って頂いたメーカにイメージ図を用いて相談し、メーカを絞り込む

    手段:直接又はオンライン

     

相談内容(Step1)

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 PexelsによるPixabayからの画像

 

 ・試作対応してもらえるか

  考えている台数、材質、大きさなど概略の話をします。技術的、取引上、業務状況等等で形状の説明以前に対応頂けないメーカもあります。

 

相談内容(Step2)

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 UmedmiによるPixabayからの画像

 

イメージ図を説明しながら相談します。

 ・設計を反映した試作をしてもらえるか

  自身で行った設計で試作したいことを話します。試作対応するが設計は自社がするメーカもあります。

 ・装置全体の部品の加工をしてもらえるか

  装置全体を作って欲しいと話します。削り加工、接合のみ引受ける行うメーカもあります。

 ・図面化まで対応してもらえるか

  CAD図やデータを支給しなければならないメーカもあります

 ・最後、組立まで対応してもらえるか

   部品加工のみ行うメーカもあります。

 ・概算でどの程度の費用と納期が必要か

   高額であったり納期が遅い場合があります

 

〇全て対応してもらえるメーカが複数見つかった場合

 以下の判断基準でメーカを選択します

 ・対応が早く積極的

 ・素材、加工に関する知識と経験が豊富

 ・費用、納期が希望に近い

  

 〇単独で全て行うメーカが 見つからない場合

加工毎に図面化してくれるメーカを探し、自分が全工程を管理することにします。メーカの選択は上記と同様にします。複数のメーカで実施する場合は最終工程のメーカに組立を引き受けてもらえるか相談します。難しければ自分(自社)で組立することを考えます。

注意事項:不具合が生じた場合

メーカが分かれていると加工途中や最終組付時に不具合が生じた場合の対処方法を考えておく必要があります。方法は別の機会に説明します。

 

次回はメーカと最終形状決定のための詳細打合せについて説明します。

 

 

第12回 詳細検討する

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RAEng_PublicationsによるPixabayからの画像

作成した概略形状に対して詳細検討が必要であれば実施します。絞り込んだ形状に不安がある場合などは簡易評価やシミュレーションで確認したり、複数の形状を製作し装置の評価時に比較して決定します

〇目的:不安部分を製作前に確認する、または評価時に絞込む候補形状を考える

〇考え方:製作前確認は形状の方針検討までに留めます。候補の形状部品は本体から外して交換できるよう構造を考えます

〇製作前確認方法:

 ・簡易テスト:部分的に模擬した形状を数種類作り計測する

 ・シミュレーション:計算環境があれば数種類の形状について簡易計算する。

〇アウトプット:

 ・該当部分の細部形状の寸法

 ・候補形状と寸法

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次回から製作の手順に入ります